学会について

理事長のご挨拶

一般社団法人 日本認知・行動療法学会理事長 戸ヶ崎 泰子

 本学会は、前身となる日本行動療法研究会が1974年に発足してからもうすぐ50周年を迎えます。この約50年間に本学会は様々に発展してきましたが、特に2014年の法人化・改称は大きな変革であったと言えるでしょう。日本認知・行動療法学会としての新たなステージは、初代理事長の熊野宏昭先生(早稲田大学)をはじめとする歴代理事長のリーダーシップの下、会員数2,400名を超える大きな学術研究団体になりました。これは認知行動療法に対する社会的関心の高さの表れでもありますし、会員の皆様が様々な臨床領域で質の高い認知行動療法を提供し続けてくださっているおかげだと思うと、理事長という責任の重さに、あらためて気持ちを引き締めて臨みたいと思っているところです。

 さて、2022年は公認心理師法が施行後5年目にあたるため、現在この資格制度に関する検証が始まっています。そこでは、この5年間の公認心理師の活用状況や配置によるメリットを検証するだけでなく、これからの人材養成の在り方なども議論されます。すなわち、本学会にとっても、認知行動療法に関する高度の専門的実践力を育成するための研修事業等を点検し、援助ニーズに適切に対応するという社会的役割を果たすための取組を充実させる機会であると捉えることができます。

 この点において、本学会は行動療法士Ⓡと専門行動療法士Ⓡの資格認定制度を確立しており、2021年からは認知行動療法師Ⓡと認知行動療法スーパーバイザーⓇの資格認定制度の運用も開始しています。特に、認知行動療法師と認知行動療法スーパーバイザーの資格認定制度は、学会組織の枠を越えて、グローバル・スタンダードに立脚した質の高い認知行動療法の実践者を養成することを目的とした制度であることから、今後の発展・展開が期待されるところです。しかしながら、この認定制度の運用は始まったばかりなので、広報活動や安定した運用に向けた取組が必要ですし、何より質の高い研修プログラムを提供し続ける体制を構築していくことが求められます。加えて、Society5.0の到来によって従来の対面式の研修だけでなく、オンライン研修など、多様な学び方が広く認識されるようになってきた現状もふまえて、研修方法についても丁寧な議論が必要だと感じています。この認定資格に対する信頼を高めるための活動が今期の重要課題の1つと考えております。

 もう1つの大切な課題は、会員の皆様のご意見が反映されやすい学会運営に取り組むことと思っています。2021年開催の第47回大会において、中川彰子大会会長が「日本認知・行動療法学会ダイバーシティ&インクルージョン推進千葉宣言」を宣言されましたが、本学会会員の皆様は、保健医療分野はもとより、教育分野、福祉分野、司法・犯罪分野、産業・労働分野と幅広い分野で活躍されておられます。また学生、子育て世代、ベテラン、医師、臨床家、研究者など職種やキャリアも多様です。このような多様な会員の皆様が各々の個性と能力を発揮しながら、学会活動に参加・活躍できる学会運営を目指すことが、学会初の女性理事長としての大切な役割なのではないかと認識しております。

 とはいえ、慣れない重責に不安を感じるところでありますが、今期の学会役員体制は、副理事長の熊野宏昭先生(早稲田大学)をはじめとする認知行動療法のエキスパートの先生方や新たに役員になられた新進気鋭の先生方で構成される充実したものになっています。相互協力関係を築き、会員の皆様にとって実のある学会活動になるよう、関連諸学会や諸団体と連携しながら、社会的責務を果たすとともに、日本認知・行動療法学会の発展に力を尽くしたく思っています。

 皆様方の本学会へのご理解とご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2022年8月吉日