ご案内学会組織学会活動学会認定資格規則・申込書類関連情報トップページへ

各委員会の最新情報へ

編集委員会 教育・研修委員会 資格認定委員会 国際交流委員会 広報委員会 将来検討委員会


入会のご案内
トップページ > トピックス  > 海外最新情報&在外便り >  WCBCT参加報告
WCBCT参加報告

 学会初日のオープニングセレモニーでは、David M. Clark先生がCBTの現状について報告していた。オーストラリアでは訓練生の84%がCBTを専攻しており、普及率の高さがうかがえた。その要因の一つとして、オーストラリアのCBTの学会(AACBT)は、学会だけでなく、小規模なワークショップや大規模なワークショップを開催したり、フェイスブックページなどを活用するなどして、普及活動を進めていることが挙げられた。
 この点に関して、日本ではどれほどの普及活動がなされているのだろうかと感じた。私は医療機関に勤務していて、CBTのカウンセリングを希望して受診をする患者さんを担当させていただくことがあるが、CBTを知った経緯は「インターネットで見た」というものが多く、その他は「TVで観て知った」というものであった。しかし、地域の小規模なワークショップなどに参加して知った、といった話は聞いたことが無い。また、アメリカやオーストラリアのCBT関連の団体はSNSを活用しており、会員がそこに投稿することで、ユーザーはエビデンス含めCBTの様々な情報を知ることができるようになっている。このような普及のための取り組みは日本でももっと活用できるのではないかと感じた。
 また、今回のWCBCT全体の発表の中で、第三世代の行動療法と呼ばれるアプローチの発表は思っていたよりも少なかった。マインドフルネスに関する発表は比較的よく見たものの、数年前のWCBCTに比べると発表数は減っていると聞いた。また、ACTに関する発表も思っていたよりも少なかった。これは、専門学会であるAssociation for Contextual Behavior Science(ACBS)がWCBCTの開催日時の直前にアメリカのシアトルにて開催されていたため、ACTを専門にする先生方はそちらにて発表していた可能性もある。
ただし、私がポスター発表を行ったACTに関する症例研究(Treatment based on Acceptance and Commitment Therapy for a woman with writer's cramp) に対し、様々な国の人がハンドアウトを持ち帰ってくださり、オーストラリアや韓国、そして日本の先生方から質問をしていただき、関心を示していただけた。また、Robert Zettle先生のシンポジウムは満員となるなど、ACTへの関心の高さがうかがえた。『ACTについて、まだ実践はしていないけれど、関心はある』という人が多いということだろうか。
また今回の様々なシンポジウムやポスター発表の中で、エクスポージャーそのものの効果を高めようとしたり、エクスポージャーのドロップアウトを減らすために工夫を行った研究が複数みられた。CBTであれACTであれ、テクニックやエクササイズばかりが先行してしまうと、臨床現場で自分が患者さんに行っていることが学習理論で説明するところの何を行っているのかがわからなくなってしまうことがあると個人的には思っているが、基本的な学習理論の視点から、介入効果を高めようとする工夫を積み重ねていくことは、学習理論に基づく治療アプローチが発展していくために当然ながら重要なことであると感じた。
WCBCT全体の発表において、実験デザインや行動指標を活用し、丁寧に単一症例研究を行った発表は非常に少なかった。RCT等による大規模研究が重んじられる風潮があるのであれば、単一症例研究が少なくなるのも当然かもしれない。しかし、あるアプローチが大多数の患者さんに対して効果がある可能性が高いことが分かったとしても、だからと言って現場で目の前の患者さんに効果があったかどうかを丁寧に検証しなくても良いはずはない。また臨床現場では、大規模研究では対象者になり得ない複雑な問題を抱えた患者さんを担当することがある。そのようなとき、独特で複雑な問題を抱えた患者さんに介入する際にどのように工夫するかを知りたいと思うことも多い。そのため、RCT等による大規模研究と並行して、精神科臨床においても実験デザインや行動指標などを活用して、丁寧な単一症例研究を積み重ねることも、CBTの発展のために重要なのではないかと感じた。

医療法人桜桂会 犬山病院
臨床心理士
瀬口 篤史