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足達先生名誉会員就任のお祝い

 認知・行動療法学会名誉会員のご就任、おめでとうございます。編集委員として長年学会の運営に御尽力下さった足達先生にお祝いの言葉を申し上げる機会を賜り、恐縮です。ここに私からお祝いの言葉を述べさせていただきます。

 私が足達先生を知ることになったきっかけは、1989年に内山記念賞を受賞された先生の論文「肥満に対する行動療法の効果とその予測因子」に出会ったことです。それまでに先生は集団を対象とした習慣行動変容プログラムを実施し、肥満や脂質異常症の改善など、主に地域と産業保健分野での健康増進に関わる研究に取り組んで来られました。この論文が発表されたのは健康日本21開始の10年以上前のことです。まだメタボリックシンドロームという言葉も勿論なく、肥満や糖尿病に必要な食習慣や運動習慣の改善には当人の意志と意欲ばかりが強調されていた当時、本邦における先生の御研究は大変先駆的なものでした。その後先生の御研究は、禁煙や睡眠、養育行動など幅広いテーマに広がり、やがてライフスタイル療法として統合され、結実して行きました。

 論文を読んで先生の御研究に憧れた私は、「あだち健康行動学研究所」に2000年から10年近く関わらせていただくことになります。このことは、その後の私の人生に大きな影響をもたらす出来事となりました。
 研究所の印象深い思い出は、毎週開かれていたデータカンファレンスです。立場に関係なくデータや解析結果について議論を交わすことは、ヒリヒリした緊張感を伴う楽しい時間でした。私が整理を担当させていただいた喫煙行動のデータを、対象集団の行為と暮らしが浮き上がるように先生が読まれた時の感銘は、今もよく覚えております。その時先生は、興奮する私に対して「データはこうやって読むものよ」と涼しい顔でおっしゃいました。データの捉え方、データへ真摯に対峙しようと努力する基本姿勢は、先生から学ばせていただいたと思っています。

 このたびは、名誉会員のご就任、おめでとうございます。末筆ではございますが、足達先生の今後の御活躍と研究所のますますの御発展を、遠方からお祈り申し上げます。

羽山順子

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