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<大会参加記>日本認知・行動療法学会第45回大会参加記(二瓶正登)

 専修大学大学院の二瓶と申します。現在大学院の博士課程に在籍しています。といっても臨床系ではなく、学習心理学研究室、いわゆる基礎系のラボにいます。同じ研究室の後輩たちはゾウやウマの研究をしています。その中で私は恐怖条件づけの再発についての研究を行っています。この度は先に行われました認知・行動療法学会の参加記を書かせていただくことに相成りました。初めに、本学会の運営をされた先生方、とても貴重な場を提供いただき本当にありがとうございました。また、運営スタッフの皆様にも感謝申し上げます。自分が発表したポスター発表とシンポジウムのどちらともスムーズに進行できたのはスタッフの方々のサポートがあってこそだと思います。暑い中外で道案内いただいたのも大変だったと思います。また、受付でもたついていた私にも暖かく説明してくださいました。本当にありがとうございました。本学会終了後に感じた高揚感は今まで参加した学会のどれよりも強かったことを覚えています。
 さて、参加記を書こうと思います。書くにあたって、これまでの大会の参加記を参考にせねばと、今まで書いてこられた皆様の参加記を読ませていただきました。そこで気づいてしまったのです。「あれ、書くことが無い・・・」。皆様の書いた文章では、参加したワークショップやシンポジウムについて、ご自身の立場から学ばれたことを真摯に書いておられます。しかし一方、私はワークショップにも出ていなければ、シンポジウムは自分が発表したもの以外は行っていません。ポスター会場にいた時間はおそらく参加者の中で一番だと思いますが、在籍責任時間を遥かに超えて発表していたりと、若干周囲に迷惑をかけていたような気もします(周囲で発表されていた方々、ごめんなさい)。これだけ書くと参加だけして何もしていないダメダメ院生な訳ですが(いや、実際そうなんですが)、でも学会参加後に感じた高揚感は偽りではないはずです。そこで、この高揚感の源を解き明かしていくことをもって参加記としたいと思います。
 まず自分の出番は2日目のポスター発表でした。初めに、会場に貼られているポスターを拝見させていただきました。多かったのは現場での介入研究といわゆる「第三世代」系の研究でしょうか。とても興味深いものが多く、特に気になったものをチェックしておき、後で質問に行こうと心に決めました。そして自分のポスターを貼りました。タイトルは「社会的刺激を用いた恐怖条件づけにおける復元効果のベイズモデリング」です。要するに恐怖条件づけにおける学習を説明するために数理的なモデルを作成し、ベイズ的手法を用いて推定したパラメータと尺度得点の相関を見たものです。これだけ書いても、場違い感満載です。始まる前は「この発表を聞いてくれる人はいるのか」「そもそもこれは認知行動療法の研究では無いのでは」などと一人で考えていました。しかし発表を始め、来ていただいた皆様と議論していくうちに少しずつ自分の考えは変わっていくこととなりました。「こういったアプローチも応用につながる余地はある」と。従来の認知行動療法のモデルは定性的なものが多かったように思います。しかし定量的なモデルにすることによって、「この手続きはこのパラメータを操作しており、その結果アウトカムが変化するんだ」というように、その機序と介入すべき対象が自然と明確化されていくはずです。また、違う視点から見ることによって新たな介入法が見えてくる可能性もあります。そうした有意義な議論が続いているうちに、気づけば想定よりかなり多くの人に来ていただきました。そのこともあり、この楽しい時間は在籍責任時間を2時間ほどオーバーするまで続きました。来ていただいた皆様、本当にありがとうございました。1つ残念だったのは、来た時に行くと決めた発表に行くことができなかった点です。
 次の出番は3日目でした。この日は午後からシンポジウムの発表がありました。タイトルは「エクスポージャーの最前線:制止学習アプローチ」で、その中で学習心理学における一領域である連合学習理論の立場からお話しをさせていただきました。この発表用スライドを作成している最中、発表で絶対に話そうと決めたことがいくつかありました。その中でも特に「モデルの良さは絶対的な基準では決まらない」という点は一番伝えたい事柄でした。つい新しいアプローチ法や枠組みが出来るとそれが前のものよりも「絶対的に良い」と考えてしまいがちですが、そんなことはないと私は考えています。どの理論やモデルにも利点と欠点があり、評価基準によって良さというのは変わってくるのではないか。そして、現状の課題や問題をより良く説明できるモデルが作られることが望ましいのではないかと個人的に考えています。つまり、従来の枠組みで説明できたことを伸ばしていくことも重要ですが、それ以上に「今までうまく説明できなかったこと」に対応できるモデルを考えていく必要があるのではないかということです。そのためには現在の枠組みの課題点を明確にする作業、すなわち「認知行動療法の弱点」の発掘が重要なのではと思います。こういった点について指定討論の先生方と議論することができたのは、とても貴重な体験となりました。また、こちらも想定をはるかに超える方々に来ていただきました。本当にありがとうございました。
 ポスター発表、そしてシンポジウムでの発表を通して、学会期間中に様々なことを考えました。もちろん、自分のような若輩者には答えは見つけ出せていません。しかし、自分なりの見通しは立てられたような気がします。特に、今までモヤモヤしていた「基礎心理学的知見の臨床応用」というものをスッキリと考えることができるようになりました。一見臨床心理学的な応用は難しそうな研究であったとしても、少し見方を変えるだけでとても魅力ある「臨床心理学的研究」になり得る。そのためには「現状の課題点の把握」が必要で、基礎心理学的知見がその問題に対応する枠組みを提供した時に、真の意味で「臨床応用」が達成されるのではないか、と。そして、この気づきこそが高揚感の原因だったのです。
 最後になりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。皆様と比べ認知行動療法からやや離れた位置にいる私であっても、とても意義のある学会であったことが伝わっていれば幸いです。こういった基礎と臨床の架け橋が実現できることもこの学会の魅力ですね。次回は今回以上の高揚感が感じられるよう、しっかり研究して臨もうと思います。

二瓶 正登 (専修大学大学院 文学研究科 心理学専攻 博士後期課)