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<在外便り>オレゴン大学Richard Albin先生の下で


野口先生とRichard Albin先生 2008年5月より,アメリカ・オレゴン大学のRichard Albin先生の下で,Courtesy post-doctoral research associateとして留学をさせていただいております。

 オレゴン大学はオレゴン州のユージーンという町にあります。州最大の都市であるポートランドから車で2時間ほど南下した場所にあり,田舎にある大学の町といった雰囲気です。ユージーンの人はとても親切で,自分たちが親切であるということに誇りを持っています。道に迷っていると必ず誰かが話しかけてきて道を教えてくれますし,店に入って嫌な思いをしたことは一度もありません。我々のような外国人にとっても非常に住みやすい町です。

 オレゴン大学は特別支援教育の分野ではとても有名で,全米でもトップクラスの実績があります。また,私は博士論文で注意欠陥/多動性障害の子どもに対する機能的アセスメントを用いた介入をテーマとしていましたが,この機能的アセスメントに関する研究が多く行われているということもあり,オレゴン大学は私にとって非常に理想的な留学先でした。

 初めてAlbin先生にお会いしたとき,まず最初に「Rickって呼んでね」と言われて面食らいました。アメリカでは年上でもファーストネームやニックネームで名前を呼ぶという知識はありましたが,日本ではありえないことなので非常に抵抗がありました(こればかりは半年以上経った今でもなかなか慣れません)。Albin先生と話し合いをした結果,週に1回先生とミーティングするほかに,授業やリサーチミーティングに参加することになりました。今は1事例の実験デザインの授業とPositive Behavioral Support(PBS)のリサーチミーティング,博士課程の学生のゼミに参加させていただいています。

 授業は週に2回(それぞれ1時間20分)あります。授業で使用される教材(パワーポイントや配布プリントなど)は大学のウェブサイトからダウンロードすることができるようになっており,学生は自分でそれをプリントアウトして持っていきます。毎回指定された本や論文を予め読んで行く必要があるのですが,英語が苦手な私にとっては普通の予習だけでは授業についていけません。授業中にどんなディスカッションがあるかを予想して自分が何を言うかを考えたり,先生に指されたときに何か言えるように準備する必要があります。2週間に1回くらいのペースで課題が出るので,学生は常に予習や課題に追われることになります。一度,授業を担当されている先生から授業の感想を聞かれたことがあり,日本の大学は先生が話している時間がほとんどなのでディスカッションの多い授業は印象的だったという話をしたら大変驚かれていました。というのも,アメリカではいかに学生から意見を引き出すかが求められるのだそうです。実際,学生たちは授業中も積極的に発言をしますし,その積極性が授業への参加度として評価されています。

 リサーチミーティングでは,研究プロジェクトの進行状況の報告や確認が行われます。PBSのプロジェクトでは10人以上の教員やポストドクター,ドクターの学生が関わっており,研究対象となっている学校は十数校あります。多くの人が関わるため役割分担も明確に分かれていて,研究計画を立てる,データの解析をする,学校に出向いてコンサルテーションをしたりデータ収集をするという役割はそれぞれ別の人が担っています。多くの場合,研究計画を立てたりデータ解析をするのが大学の教員で,学校に出向くのがポストドクターやドクターの学生です。

 リサーチミーティングに出ていると,日本の研究の進め方との違いに驚かされることが度々あります。例えば,データ収集とデータ解析は別の人が担当していて,被験者のデータは番号で管理されています。データ解析をする人はどこの誰についてのデータなのかを知ることはなく,研究者側のバイアスのコントロールが厳密に行われていました。また,何よりも驚いたのは予算の多さでした。日本の研究費の数十倍の予算があるため,ポストドクターを雇って研究を進めることができます。学校で介入を実施するために学校の教員に対してトレーニングをする場合には,トレーニングを実施した時間の分だけ教員にお給料を支払うとのことでした。これだけの予算を使うことができるのは大変羨ましいことですが,その代わり研究費の申請には博士論文を1本書くくらいの努力が求められます。

 しかし,日本とアメリカで共通することもあります。普段のリサーチミーティングでは,学校の先生とどうやって信頼関係を作るか,積極的に介入に関わってもらうにはどうしたらいいのか,ということが主な話題です。日本で研究をしているときもそれが一番難しく,また重要な部分だったので,この点に関しては国境はないのだと実感しました。

 ここまで読んで下さった読者の方は,私が何の問題もなくコミュニケーションをしている姿を想像されているかもしれません。しかし実際は違います。相手の言っていることは常に虫食い状態で理解(と言うよりも推測)しているのが現状で,毎日がサバイバルです。日本で当たり前にできていたことが全くできなかったり,言いたいことを言葉にできない経験も数え切れないほどしてきました。もし,深い理解が必要な勉強をするのであれば,母国語で勉強する方がはるかに効率がいいとも思います。

 それでも海外に出る意義は「違いを知る」という点にあると思います。研究手続きの違いを知ることで,それぞれの利点や欠点をより客観的に考えることができますし,文化の違いをこの目で見ることで,海外の実践を日本に導入するときに何を日本に合わせるべきなのかを考えやすくなります。これだけでも非常に貴重な経験なので,留学のチャンスがあればぜひ海外に飛び出すことをお勧めします。

 また私自身この貴重な経験を無駄にしないように,さまざまなことを吸収したいと思っております。

University of Oregon・日本学術振興会
野口美幸