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行動療法学会に期待すること(浅野俊夫:愛知大学、日本行動分析学会) 


「行動療法コロキウム‘08 in なごや」に参加して

愛知大学文学部心理学専攻教授 浅野俊夫
(日本行動分析学会常任理事)


 コロキウム責任者の原井宏明先生から行動療法学会のコロキウムを犬山で開催するのでコメンテーターとして参加してほしいという要請をうけ、行動療法の現状を学会員でもないのにじっくり勉強する機会を与えていただいたことに感謝して喜んで参加させていただきました。とくに犬山の地は小生が20年近く勤めた京都大学霊長類研究所があり、スキナーをはじめ数多くの行動分析の研究者が訪れた場所でもあり、その犬山でヒトの行動療法のコロキウムが開かれることに感慨もひとしおでした。このコロキウムには愛知大学で集中講義をお願いしている奥田健次先生も事務局として入っておられ、学会員のコメンテーターには小林重雄先生や久野能弘先生といった愛知在住の大ベテランの方々も参加され、症例研究に対する真剣な討論に引き込まれてあっという間に3日間が過ぎてしまいました。

 小生がコメンテーターを担当した発表だけではなく、他の多くの発表でも共通して気になり、いろいろ質問なりコメントをさせていただいたのは、行動随伴性の分析すなわち先行条件(A)、行動(B)、結果(C)のうち先行条件の分析で不明な点が多いということでした。先行条件として明らかにしなければならないのは二つで、一つは弁別刺激による刺激性制御、もう一つは強化刺激に対する確立操作です。これについては行動分析の入門書でAとして強化刺激や嫌悪刺激の有無だけを強調したことと上記二つについての説明が臨床現場では分かりにくかったためかと思われます。ぜひもう一度臨床に即した入門書、たとえばミルテンバーガー著「行動変容法入門」(園山ら訳)二瓶社(2006)で再確認をお願いします。簡単にいうと、弁別刺激というのは、ある特定の強化を受けるには何時・どこで・何をしたらよいか、つまりB(行動)のTPOを指示する刺激であり、それは外部の環境刺激(他者の行動を含む)や、自分自身の言語反応や情動反応がその刺激としての働きをする可能性があります。また、確立操作というのはC(結果)となる事象の強化刺激としての効果を確立するための操作ですから、刺激の提示や除去のニーズ(必要性)を発生させるような環境操作です。食べ物を強化刺激にしたければ一定時間、一切の食べ物の摂取を制限するか、運動などでカロリーを消費させる環境に置くことが食べ物の確立操作になりますし、何かに向かって段階的に目標を立てれば、カウンセラーからの社会的強化だけでなく、その目標を達成すること自体が強化事象として確立されます。

 外部の大きな行動随伴性を明らかにしておかないと内省報告などで明らかとなる認知反応の刺激性の行動的位置づけなどが難しくなります。物理的(身体的)、社会的(対人的)、文化的(言語、規則)環境と行動との機能的分析をおこない、妥当な治療目標を立て、局所的な行動の介入からはじめて成功経験を積み上げ、より大きな、あるいは、より精確な行動への支援につなげていく必要があります。若い人たちの熱意に触れて、非力ながら、小生でお役に立つことがあればできる限り協力しようと思っています。今後も行動療法学会の発展を祈ります。