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日本認知・行動療法学会第49回大会 ポスター賞

日本認知・行動療法学会では,認知行動療法の臨床・研究の発展・充実に寄与する研究発表の奨励を目的として,日本認知・行動療法学会の年次大会に応募されたポスター発表のうち,最も優れた発表に対して授賞する「ポスター発表賞」の選考を行い,最優秀臨床報告賞,優秀臨床報告賞,最優秀研究報告賞を授与しました。

<最優秀研究報告賞>

P2-07 支援機関への来談拒否がある場面緘黙児に対する遠隔技術を取り入れた段階的エクスポージャーと母親へのペアレント・トレーニングの実施
山中 智央,嘉手苅 瑠輝,井上 雅彦

最優秀研究報告賞受賞コメント(山中)

 この度は、日本認知・行動療法学会第49回大会ポスター賞 最優秀研究報告賞を賜り、誠にありがとうございます。選考委員会の先生方に、心より感謝申し上げます。

 今回受賞した研究では、支援機関への来室を拒否する場面緘黙児に対して遠隔技術を用いた段階的なエクスポージャーを行いながら、並行して,親御さんに対して場面緘黙用のペアレント・トレーニングを実施し,これらの介入の有用性を検討しました。 その結果、場面緘黙があるお子さんの緊張感は介入の度に着実に低下し、ビデオ会議での発話や表情の表出、体の動きなどが改善していきました。 また、ペアレント・トレーニングは、親御さんの場面緘黙に対する理解を深め、お子さんとの関わり方や育児ストレスの改善に寄与したと考えられました。 本研究の介入方法は、インターネット環境があれば、場所を問わずに場面緘黙で悩むご家族に有用な支援を届けられるため、場面緘黙支援において重要な選択肢となりうると思われます。

 共同発表者である、嘉手苅瑠輝先生、井上雅彦先生から多くのご助言・ご指導をいただきました。心からお礼申し上げます。この度の受賞を励み、今後も場面緘黙支援の普及・発展に向けて、より一層研究活動に精進してまいりたいと思います。この度は誠にありがとうございました。

<優秀研究報告賞>

P1-49 ゲーム障害の要因となる認知の生起プロセスの検討
宮里 琉真,伊藤 義德,尾形 明子

優秀研究報告賞受賞コメント(宮里)

 この度は,日本認知・行動療法学会第49回大会の優秀研究報告賞を賜り,誠にありがとうございます。ご選考いただきました委員の先生方に心から感謝申し上げます。

 本研究では,生活上の機能障害が生じるほどの過剰なデジタルゲームの使用(Problematic Gaming)の生起・維持に関わる認知的要因の検討を目的としました。その結果,ゲームに対し個人が抱いている価値の高さとゲーム以外の活動への価値の低さのギャップ(宮里他, 2022)が大きくなるほど,非柔軟的なゲーム使用のルール(King & Delfabbro, 2016)などの認知が強まり,生活への悪影響やゲームに起因するトラブル数が増加することが示されました。本研究の結果は,ゲーム使用による問題の発生及びゲーム以外の活動への従事を促す臨床支援の効果に通底する心理学的機序の理解に示唆を与えるものだと考えています。

 本研究は,共同発表者の伊藤義徳先生,尾形明子先生のみならず,尺度翻訳のご許可,ご協力いただいたD. L. King先生,さらに研究室の先輩方をはじめ多くの先生方にご指導とご助力をいただき取り組むことができました。また,本研究にご参加いただきました皆様,学会の運営に携わられた先生方に,この場をお借りして深くお礼申し上げます。今回の受賞を励みに,より一層研究活動に精進してまいります。

<最優秀症例報告賞>

P1-100 頻回な物品要求行動を示す認知症患者への行動学的コンサルテーションの効果
阿部 祐也,平山 久美子,堀越 歩,後藤 貴浩,新藤 剛

最優秀症例報告賞受賞コメント(阿部)

 この度、最優秀症例報告賞という名誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。共同演者の方々、共に介入に取り組んでいただいた病棟職員の方々、選考いただいた先生方に深く感謝申し上げます。

 本演題は、頻回な物品要求行動とそれに伴う暴言・物品の破壊行動を呈した認知症患者に対し、応用行動分析学的アプローチを用いた結果について考察したものです。機能分析を行った結果、暴言等は物品要求行動を始まりとする行動連鎖の一部であり、特定の物品を職員から引き出す機能があると予想されました。この問題に対し多職種で協働して取り組み、病棟の看護師を中心に問題行動の先行刺激と後続刺激を操作した結果、物品要求行動および暴言等が減少しました。本邦の認知症を含む高齢者医療の領域において、応用行動分析学的アプローチは未だ一般的ではないと感じております。本症例の報告が、その有用性を示す一助となれば幸いです。

 臨床経験も浅く自分の未熟さを感じることも多い私がこのような機会をいただけたのは、同僚や先輩・先生方のご協力があってのものだと痛感しております。感謝の気持ちを忘れず、受賞を励みに、今後も臨床実践に臨んでいきたいと思います。

<優秀症例報告賞>

該当なし

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